「事業活動に必要な環境分析(2):SWOT分析」では、外部環境の「機会」と「脅威」、そして内部環境の「強み」と「弱み」という2つの観点から経営戦略を考えることについて触れた。
企業全体の方向性を定める経営戦略がSWOT分析やPEST分析を基に描かれるのに対して、経営戦略の下で個別の部門ごとに競争優位性を確立するために定める事業戦略では、SWOT分析も活用するが他にも「3C分析」などが広く活用されている。
3C分析は、「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの視点から外部環境を分析し、競争優位性を見出すための分析手法である。この3C分析も、SWOT分析と同様に外部環境と内部環境に分けて捉えることができる。

1.顧客(Customer) 顧客分析は、大きな視点でみる「マクロ」と、小さな視点でみる「ミクロ」に分類することができる。マクロの視点は「市場」という広い領域を対象とし、ミクロの視点は「消費者」という狭い領域を対象とする。分析を行う具体的な要素としては、以下のものが挙げられる。 【市場(マクロ)】 ・市場規模 ・市場成長性 ・市場収益性 ・セグメント ・構造変化 ・構成比率 (※海外の場合は、さらに国の成熟度、インフラ整備度、治安なども含まれる) 【消費者(ミクロ)】 ・ニーズ ・顧客像(ペルソナ) ・購入決定権者(DMU) ・購買決定要因(KBF) ・購買行動(AIDMA<注目→興味→欲求→記憶→行動の流れ>) |
2.競合(Competitor) 競合分析も顧客分析と同様に、大きな視点でみる「マクロ」と、小さな視点でみる「ミクロ」に分類することができる。マクロの視点では「業界」を対象とし、ミクロの視点では「他社」を対象とする。 【業界(マクロ)】 ・寡占度(競合他社の多さ/少なさ) ・企業数 ・参入難易度 ・収益性 ・業界特性 ・業界構造(利害関係者) 【他社(ミクロ)】 ・強み/弱み(経営資源) ・製品の特徴 ・シェア ・戦略 ・財務状態 |
3.自社(Company) 顧客(Customer)や競合(Competitor)が外部環境に該当するのに対して、自社は内部環境に該当する。主な分析の対象となるものとして、以下のものが挙げられる。 ・シェア ・ブランドイメージ ・技術力 ・品質 ・販売力 ・収益力 ・経営資源 ・経営課題 ※「他社」と比較できる項目は全て比較するのが望ましい。 |
▼3C分析の活用事例<アパレル業界>
1.顧客(Customer)
【市場(マクロ)】
・成熟市場(欧米・日本)と新興市場(アフリカ・東南アジア)で成長のバラツキ
・ECサイトの普及により、オンライン販売とリアル店舗の融合が重要に
【消費者(ミクロ)】
・低価格&高品質だけでなく、環境配慮やサステナブルな商品の需要の増加
・機能性(ヒートテック、エアリズム)の需要が増加
2.競合(Competitor)
【業界(マクロ)】
・デジタル化の加速(AIやビッグデータを活用したパーソナライズドマーケティング)
・D2C(Direct to Consumer)ブランドの台頭(中間業者を介さない直接販売)
【他社(ミクロ)】
・ZARAが最新トレンドを取り入れたファストファッションで展開
・H&Mが低価格戦略でグローバル展開
・NikeやAdidasがスポーツウェアや機能性ウェア市場で展開
3.自社(Company)<ユニクロのケース>
・グローバル展開
・機能性衣料の強化
・自社製造/販売モデル(SPA※製造小売業)
・EC販売の強化とリアル店舗との連携強化(オムニチャネル)
・独自の高機能素材開発(ヒートテック・エアリズム・ウルトラライトダウンなど)
▼3C分析の順序
3C分析では顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)を対象として分析を行うが、これらの分析は「どれから始めても良い」というわけではない。効果的な分析のためには、明確な分析の順序がある。最も効果的な分析になる可能性が高いのは、「1.顧客」「2.競合」「3.自社」の順での分析である。(※これまでにみてきた順番)
最初に外部環境(顧客・市場)を正しく理解しなければ、内部環境(自社)の分析によって自社の立ち位置の評価や今後の方向性を適切に評価することは困難となる。すなわち、最初に顧客のニーズを把握し、次に競合がどのような製品やサービスを展開するかを把握した上でようやく、自社にとっての最適な戦略が明確になる。もしも最初に自社の分析を行うと、自社の強みを活かそうとして「顧客が求めていない製品やサービス」を提供する可能性がある。
こうした理由から、3C分析では顧客を見極め、競合の出方を理解した上で自社の戦い方を定めることが求められる。
<事例:スターバックスのケース> スターバックスは、「コーヒーを飲むだけでなく、心地よい空間を求める顧客」の存在に着目し、「サードプレイス(第三の居場所)」という新しい価値を提供した。これにより、単なるカフェではなく滞在価値のあるブランドとして成長している。もしもスターバックスが「自社」の分析からはじめ、良質なコーヒーを提供することに注力していれば「サードプレイス(第三の居場所)」という強みを持つことはなかったかもしれない。 |
「1.顧客→2.競合→3.自社」の順序で分析することが定石となる3C分析だが、この流れは「原則」であって「絶対」というわけではない。たとえば「経営戦略の基盤:「ニーズ/シーズ」と「強み」」でも触れたSonyのウォークマンの事例のように、自社の技術を起点として製品・サービスを開発し、新しいニーズを生み出して大ヒットするというケースもある。
▼3C分析の目的は、「4C」を考えること
3C分析は、しばしば「顧客や競合、自社の現状を分析する方法」とだけ考えられることもあるが、3C分析の本来の目的は「競争優位性を見つける」という点にある。すなわち、単なる情報整理ではなく、最終的に自社がどのようなポジション(=戦略)を採るかを決めることが重要となる。
上述したユニクロのケースいえば、
・顧客(Customer):
→価格も機能も妥協したくない
・競合(Competitor):
→ZARAはトレンドに強み、NIKEはスポーツ分野に強み
・自社(Company):
→SPA(製造小売業)かつ独自素材開発に強み
という情報から、
・顧客価値(Customer Value):
→低価格かつ高品質で機能性を備えた衣料
というポジション(=戦略)を導き出してこそ、「分析」となる。こうして導き出された顧客価値は、Customer Valueの頭文字から「4つめのC」と呼ばれることもある。
▼「競合」の分析は、間接的な競合も含める
3C分析のひとつである「競合」の分析を行う上で重要なのは、直接的な競合他社だけでなく、間接的な競合他社も含めるという点である。たとえば、ユニクロの競合として直接的なものとしてはZARAやH&Mといったアパレルブランドや、NIKEやAdidasといったスポーツウェアメーカーが挙げられるが、こうした企業以外にも、競合になる他社としてはインターネットでフリーマーケットサービスを提供するメルカリなどがある。
ユニクロとメルカリは一見すると直接的な関係性のない企業にみえるが、消費者の立場で考えると衣類の購入はユニクロだけでなくメルカリでも可能となっている。新品と中古品という違いはあるが、「衣類」というニーズを満たす点ではそれぞれが競合関係にあるといえる。
なお、直接的な競合他社だけでなく間接的な競合他社がいない場合でも、それが必ずしも自社にとって有利に働くというわけではない。たとえば、かつてGoogleは「手に持つことなくどこでもインターネットとコンピューターにアクセスできる」というビジョンを掲げ「Google Glass」というメガネ型のデバイスを開発した。この市場では明確な競合他社が存在しておらず市場を独占できる可能性があったが、市場にニーズがなかった(=顧客がいなかった)ことから販売が終了した。この事例は、競合がいない場合は市場そのものがない可能性があることを示している。
(次の記事:「儲けられる市場」を見抜く5フォース分析)